「マイクロソフトと開発者が歩いてきた道,追い求める未来」
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マイクロソフト株式会社 最高技術責任者 コーポレートバイスプレジデント 古川享氏 |
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デベロッパーマーケティング本部長 |
デベロッパーマーケティング本部 |
デベロッパーマーケティング本部 |
編集部:MSDNの10周年,おめでとうございます。本日は古川さんに,MSDNが歩んできたこれまでの10年と,今後Longhornが出たり,その前にWhidbey/Yukonが出てくる環境の中で,マイクロソフトから開発者へのメッセージをお話しいただきたいと思います。
古川氏:世界で初めてのパーソナルノートブック型のコンピュータは,アスキーとマイクロソフトが一緒に作りました。それまでは可搬型ノートブックコンピュータというものなど絶対にできないと,誰もが思っていた頃です。単3電池4個で4
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6時間動いて,32KのROMの中にはBASICと通信プログラムと小さなスプレッドシートと,ちょっとしたメモパッドが入っていました。そのときからアメリカのジャーナリストがそれを使って記事を書く,ということが始まったのかもしれません。
そのプログラムコードを書いたのが,当時アスキーにいた3人のプログラマとビル・ゲイツです。そしてビル・ゲイツが最後にプログラムを書いたのがそのマシンです。
32Kのプログラムには,スクリーンエディタではなく,ラインエディタしか入らない,というとき,ビル・ゲイツが言いました。「能力が低いからそれしかできないんだ。俺だったら週末に書いてこれるよ」と。それを聞いた一人がものすごく燃えて,「じゃあ月曜までに作ってくる」と言って,みごとに作ってきました。それ以来ビル・ゲイツはプログラム書くのをやめたんです。そのときビル・ゲイツはかなり悔しい思いでコードを見ていて,イースターエッグが仕掛けられているのを見つけた。そして最後に自分の名前を追加したそうです(笑)。
編集部:(笑)。お名前を入れた最後のプログラムなんですか。
古川氏:そう。もちろんその中には,ビル・ゲイツの書いたコードも入っていました。BASICのここの部分のこのコードはビル・ゲイツがまさしく書いたというコードがたくさん入っていました。でも,コードを仕上げていくときに,さすがのビル・ゲイツも,「自分がコードを書くより彼らに任せたほうがいい」と思えたのでしょう。
なぜこのような話をいきなり始めたかというと,小さなコンピュータを作ることに,早い時期から日本の技術者も関わって,マイクロソフトのメインのコードの中にチェックインしていた。今は,出来合いのものがみんなアメリカから来て,それを触るだけ,いじるだけ,使うだけ,ということが多いですが,あの頃は,ビル・ゲイツがコードを書くのをやめるぐらいのエネルギーを持った開発者がいたのです。その中でマイクロソフトのコードは,より高度なものになっていったわけです。
それはノートPCとかCEだけの話ではありません。今はマイクロソフトからものが発信されると,いつも受身になってしまいがちです。けれど僕がマイクロソフトに関わって楽しんできた部分というのは,マイクロソフトにこちらから働きかけるということでした。自分たちのエネルギーで付加価値を載せていく,そういうところを楽しんでほしいと思っています。
MSDN
Magazineには,エンジニアたちが新しいプログラムの流れに刺激を受けて,「もっと高度な技術で,世界に自分の能力を問いかけよう」,そういう気持ちに発奮させてくれる媒体であり続けてほしいと思っています。
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小さなコンピュータを作ることに, 早い時期から日本の技術者は関わっていたんだ。 |
編集部:これまでを振り返って何をお感じになられますか? また,なぜマイクロソフトはこれまで勝ち続けて来ることができたのでしょうか?
古川氏:昔を振り返ってと言われて,気になることが2つあります。
僕らは継続性を持っていますので,昔を振り返るということではなく,「昔も今も」といつも考えていたいと思っています。たぶん昔もそうだったと思います。
もう1つ重要な要素として,今忘れている部分があるということです。昔のマイクロソフトには,直接の資本関係もないアスキーのような外部の会社と,ソースをディスクローズして一緒にものを作るという要素がありました。今もシェアードソースなどといってソースは開示しますが,外部の人と協力して成果物を全世界に問いかけることができているかというと,そこまでではありません。僕から見ると,もう一度原点に返ることが今必要であると思います。
それから,「勝ち続けた」と言うことですが,それは少し違います。新聞や雑誌,ジャーナリストや外部の協力会社の方々は勝ち続けたと表現するかもしれません。けれど,僕らはいつもぎりぎりのところで,2つ3つの選択肢がある中で,努力した中で,お客様に選んできていただいた結果だと思っています。
ある意味では周回遅れでなんとか頑張るということもやってきました。たとえばニフティやアスキーに比べたら,パソコン通信を始めたのも非常に遅かった。アスキーはすでにインターネットに突入していたのに,MSNのスタート時点はパソコン通信でした。TCP/IPの重要性などが分からないのに,X.25から始めるというところが,ドンくさかった。そういう意味では,いつも勝っていたわけではないし,意外と決断するのに時間のかかる会社なのです。
今でも覚えていますが,レーザープリンタやアウトラインフォントが出てきた頃に,僕はアスキーにいて出版に関わっていました。印刷から入ったので興味があり,ビル・ゲイツに「なんでアウトラインフォントの機能が標準でOSに入ってないのか」と尋ねたら,「なんでコンピュータに2つ以上のフォントがいるんだよ」とまじめな顔して言われました。「あららっ」という感じでしたね。
データベース開発の時も,はじめはカード型や表ベースのデータベースとRDBの違いを分かっていなかった。
しかし,いざ「これが流れだ」と分かった瞬間に,全社の軸足をそれに向けてピュっと切り替えることができる。走り続ける中でも,もし間違いがあったら,全社反省して軌道修正していくことができた。いつも警笛を鳴らしてくれたのは,社内のいろいろな人間のキャラクターでした。ビル・ゲイツ1人が引っ張っている会社ではなく,個々のセグメントの中にすごく光る人間たちがいて,その人間たちが相互に機能し合いながらこの会社の方向性を決めてきた,ということです。
それからお客様の声と,それを支える外部のジャーナリストの方の刺激で,僕らは間違いを犯さずに済んできたのではないかと思っています。
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周回遅れでもなんとか頑張ったこともあった。 ニフティやアスキーに比べて, パソコン通信を始めたのも非常に遅かった。 |
編集部:そうやってマイクロソフトはデファクトに選ばれたと…。
古川氏:デファクトとは,選ばれるとか,取るものではないと思っています。デファクトの本来の要素というのは,「そこで1位になろうが,明日また別のものが優位性を持って取り替わることもあるかもしれない」ということです。デファクトのもともとの考え方は,今のユビキタスにつながると思います。0と1の世界ではなく,一定の比率の中で均衡を保つことが,デファクトの世界を成立させると思っています。
そういう意味では,マイクロソフトが成長し続けることが可能だった要素が何かもしあるとすれば,社外の人とのコミュニケーションの取り方や,お客様に対する姿勢なのではないでしょうか…。
ITのバブルの時に比べたら少し失速状態の今,何をやることがかっこいいことなのか,何をやり続けることが実は儲けにつながるのか。何をやることが,ブランドや一定のプレステージを手に入れて,個人として輝き,会社として輝き,仕事として成果を上げることにつながるのか,ということにきちんと道筋を作り,その舞台を用意することで,最後には信頼を勝ち得るしかない。そう考えています。
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今一番かっこよくて, 一番スポットライトを浴びるのは,C#をバリバリ書きこなすこと。 |
編集部:将来的に,これからのマイクロソフトはどうあるべきだとお考えですか? 社会から求められるものとは何なのでしょうか?
古川氏:社会に求められる部分というのは,社会的に自分たちがどういう存在価値を持ち,かつそれをどういう形で発揮するか,ということを内外へ向けて語ること。もしくは実践することだと思っています。
たとえば今Linuxのことを知っているよりも,C#のことを知っているほうがかっこいい,もしくは就職に有利だ,新しいことを築き上げる要素がある,ということを誰も分かっていないと思います。C++を知っている人は,C#なんていらない,Javaを知っている人は,Javaのほうが就職に有利だ,と思っているかもしれません。けれど今一番かっこよくて,実際にこれから先,一番スポットライトを浴びるのは,C#をバリバリ書きこなすことです。特に,セキュアなコードを書けるテクニックを持ってC#を使える人です。それはデベロッパーだけに関する話ではなく,セキュリティの管理技術者としての資格を持って,たとえばSEとして関われば,全然違った評価を得られるかもしれません。
ここちょうど2カ月ぐらい全国キャラバンで,たとえばセキュリティを完備した技術者の養成を目指すコースなどを回しています。今後Realizing Potential(リアライジングポテンシャル)のキャンペーンをやり始めたときに,自分に内蔵しているエネルギーを引き出して,世の中に問いかけるためのきっかけにしていただきたい。それを身につけてくれた人が,実際に世の中でいい仕事ができるような,発表の場所,それで仕事の成果が上がるような場所を,マイクロソフトが用意させていただくことだと思っています。
編集部:業界全体を見渡して,今後の技術戦略についてどのようにお考えですか?
古川氏:最近とてもいいなと思っている話があります。銀行,家電メーカー,航空会社,化粧品メーカーの4 社が人事部門を切り離して1つの会社を作ったという話です。
編集部:アウトソーシングですね。
古川氏:自社の中にそういう部門を置かずに,外に安く発注するのがアウトソーシングです。そのときにその4つの企業がしたことは,アウトソーシングするのをやめて,人事部門を切り離して1つの会社を作ったことです。共通部分のコンポーネントを束ねて,各業種,業務ごとに必要な付属のコンポーネントはバラバラに切り出す。航空会社はこういうものが必要,信託銀行はこういうものが必要…と。共通部分,たとえば年金,退職金の制度,給与の支払方法などもコンポーネント化して,Webサービスでアクセスできるシステムを作り上げました。
そうするとどうなるかというと,その瞬間にその会社は,利益を生む会社,プロフィットセンターに変わります。今までの社内の受け身の業務から一挙に巻き返して,どれだけのサービスを提供するか,いくらで買ってもらうか,という価値を前の会社に実証していくことになります。今までなら同業他社の人事部門の仕事を受けることなどはありえなかったけれど,1回切り出した会社だから,これからはどこからでも仕事を受けることができます。
「Webサービス」とこれだけ言われながら,何をもってWebサービスの効果が生まれるのか,なかなか理解されていません。それを,この会社は,Webサービスで元の会社との間のコミュニケーションを取りながらを実証しています。
そのような会社の事例が成功してくれることによって,だからWebサービスっていい,ということが分かります。4社が集まれば,きっと他社のサーバとマイクロソフトのサーバが混在してる中で共通のコンポーネントを切り出して,どちらでも運用できるという
提案ができるでしょう。両方のマシンがサーバとして運用されてる中で自然に1つのサービスを実現する方法が実証されるでしょう。それもJ2EEと.NETで,JavaとC#で,という話ではなく,自然に両方カバーできる状況を作り上げていくわけです。Sun Microsystemsとマイクロソフトが突然仲よくなったという話ではなく,社会の要請の中で,やはりそういう姿になったということです。すべてのノウハウを囲い込んで外に出さないと,それを保守するためのコストもすごくかかります。そういう意味では,時代が少し変わり,お互いの力学が変わってきているのだと思います。
編集部:そういった中でMSDNはどのような関わりをもってきたのでしょうか。
豊田氏:Webサービスによるビジネス統合は2002年1月に.NET Framework 1.0をリリースしてから常に訴え続けてきたことで,急激に案件が増えてきている分野であると言えます。http: //www.microsoft.com/japan/showcase/には.NETをベースとしたさまざまな事例が紹介されていて具体的な開発案件のプランニングに多いに役立つことでしょう。MSDNを提供している立場からすると常に開発者サイドに立った技術情報や製品を提供し,本当に価値のあるソリューションを開発者の皆さんが構築できるようにすることが重要だと考えています。この使命はMSDNが誕生した10年前から現在まで変わりません。その意味で,技術的なトレンドや要望が変わっても,それぞれの時代でマーケットを創出する中心的な存在であり続けるというのがMSDNというサブスクリプションプログラムなんだと思います。
編集部:時代の変化に追従するのがMSDNの役割なんですね。
豊田氏:そうだと思います。やはりマイクロソフトが一番最初に有名になったきっかけがBASICであったように,開発者とマイクロソフトは切っても切り離せない関係であると思います。開発者の視点から見れば昔はMS - DOSがあり,Windows APIによるGUIアプリケーション,ActiveXやCOMによるコンポーネントの生産性,.NET Frameworkによるセキュアかつモダンなフレームワーク環境といった具合に,それぞれが何十万人という開発者がアプリケーションやシステムを構築していく基盤となり,ビジネスを行なうためのプラットフォームとなったわけです。開発ツール,サーバ製品,あらゆるテクノロジーがMSDNで提供されることで,開発者は自己の能力を存分に発揮できる。マイクロソフトのプラットフォームの良いところであるサーバ製品と開発ツールの高い親和性を駆使すれば,普通であれば何人月もかかるようなDBとWebをインテグレートしたシステムが簡単に作れてしまう。本当の意味でのスケール感というのを提供し続けたいですね。
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MSDNなんて知らない若い子達が, 自由に道具を使ったときに,非常に斬新なことをやるんだ。 |
編集部:ところで,取材で大学などに行っても,Windowsの開発者や研究者にあまりお会いできません。今後,若年層にマイクロソフトのテクノロジーをどのように広げていかれるのでしょうか。
鈴木氏:裾野を広げるために,プロフェッショナルデベロッパー以外の学生さんやホビーデベロッパーに対して,さらに積極的に施策を広げようと考えています。MSDNアカデミックアライアンスは,学科単位,研究室単位でマイクロソフトの製品を使っていただいて,研究のツールとして役立てもらおうというものです。そして,学生の方にコミュニティを構築し運営していただいて,その中でVisual Studio,ツール製品を提供して活動を広げていただこうと考えています。大学の授業などでカリキュラムとしてマイクロソフトのテクノロジーを採用していただくことも,積極的に進めていきます。
また,オンキャンパスイベントといって,学生さんに直接マイクロソフトのテクノロジーに触れていただく機会を設けていきます。先日「The Student Day」というイベントをいたしまして,超満員の大盛況だったことに,非常に強い感触を受けています。
古川氏:ある領域の人はApple Macintoshを使うことがかっこいいと思い,ある領域の人は昔からUNIXのワークステーションや,今ならLinuxを使うことがかっこいいと思っているのかもしれません。けれど問題は,自分自身の能力をどこで見つけて,どういう形で自分を磨くのか,自分の上げた成果をどういう形でどこで評価してもらうのか,ということだと思います。僕の発想は,「やるなら大きな舞台で自分を演じてみたい」というものです。確かに,たとえば音楽を,小さな小屋で30〜50人のライブハウスでやりたいという人もいるかもしれません。けれど,やるからには東京ドームも武道館もいっぱいにしてみたい,という発想を持ってもいいと思います。そのときには「自分自身のメッセージが大きなところに届いていく」という醍醐味を味わってほしいと思っています。
そういう話をすると,「そうは言っても古川さん,勝ち組みと負け組みがだいたい決まっているから,今さら何やったってもう遅いですよ」と言われてしまうかもしれません。でも100あるカテゴリの中で,1位,2位が決まっているジャンルは5つぐらいの話で,誰がトップの座に座るか決まってないフィールドがまだたくさんあります。たとえば通信と放送とコンピュータの融合に対しても,まだ天下を取ったという人はいません。たくさんのチャンスがあると思います。トップを追い落とすのではなく,相互に活かすことです。たとえば,自宅に来
た電話と携帯電話を留守電でボイスメールにして,自分のPCにシュっと並べてくれて,「電話にリプライ」を押したら電話がリンと鳴ってつながる,そういうことをできそうだと思いませんか?
ネットワークにまたがって,手元にあるデバイスが仕事する。このインタビューも,カセットテープとノートPCとデジカメをバラバラに使っていますね。それらをすべて同期して記録できたら,と思いませんか? ノートがコマンダーになって,時間軸がデジタルデバイスの中で連動していれば,できるのではないでしょうか。
そのような環境を作れば,ExcelやWordを初めて世の中に問いかけた人以上にヒーローに成れるかもしれません。
今回,マイクロソフトが学生向けのある科学賞のスポンサーをやらせていただいて,3,4人の優れた子供たちを表彰しました。その中で驚いたのは,揚力のシミュレーションソフトでした。
鳥取の中学2年生の子がお父さんと一緒にセスナに乗ったときに,「なんで翼って上に引っ張る力が発生するのか」と思った。そして,コンピュータグラフィックスのアルゴリズムを取り入れた。光の風が翼にぶつかると風の流れが変わる,その変化を青,黄色,赤で表わして,揚力の発生を見せています。そのシミュレーションはVB(Visual Basic)で作られていました。着陸するときフラップが出ますよね。フラップはスピードが遅くても十分な揚力を発生させるということだけではなく,後ろに引っ張る力を発生させる,ということ。僕は知らなかったのですが,真っ平らな板だと揚力は発生しないのが分かるのです。

それから高1の女の子が作ってきたのは,ニュートンがりんごを落として発見した重力加速度9.80665m/s2を証明していました。弟に2階のベランダからバスケットボールを落としてもらって,DVカメラで撮影します。それをPhotoshopで編集してコマを切り出して短冊状に並べると,きれいな放物線を表わす。その高さを取ってExcelでシミュレーションして,重力加速度9.75…。誤差は,ボールを離したときに下に押した力と,緯度で重力加速度が違うということ,を証明していました。DVカメラとMacintoshのPhotoshopとWindowsのExcelを使っていましたが,それを見るとMacintoshのカルチャーとWindowsのカルチャーなどとまったく考えていないことが分かります。大学の先生が,所詮子供は考えることが浅いという感じで,「DVカメラで撮ったら当然仰角が出るから,真正面向いて撮影しても結局正しい高さを取れるわけない」と発言をすると,その子は「写ってる高さを絶対軸で取らず,バスケットボールの直径を1つの目盛にしています。直径は固定してますから,それで計って,ちゃんとした目盛になっています」と即座に答えていました(笑)。
僕らはややこしいことばっかり考えてるのに,子供たちには,自然にできていました。感心しましたね。
鈴木氏:プログラムが対象になっているのではなくて,表現するという形でアプローチするんですね。目的と手段の違いというか。
古川氏:確かにMSDNは「マイクロソフトの開発プラットフォームをより深く理解してください」という使命を背負っています。しかし,そういうことすらまったく知らない若い子達が,自由に道具を使ったときに,非常に斬新なものを作ります。逆もまた真なりで,先にこんな道具を使ってください,ではなく,どの道具を使ってもいいから勝手に作ってください。できあがってきたものの中から,光り輝くものを世の中にデビューさせる道筋を作る,というほうがいいのかもしれません。
目的を達成するために必要であればプログラミングも絵心も使う。「まずプログラミングを勉強してその結果何かやりましょう」という話ではない,ということです。非常に純粋に。
編集部:子供のほうが自由な発想ができるのでしょうか。
古川氏:子供ばかりではなく,面白いことをやっている人は,地方や中央に関係なく,会社のサイズにも関係なくいますよ。
先日,北海道のあるソフト会社で作ってるモジュールを紹介していただきました。NASAで今回,火星探索の探索車が撮ってきた地図を,そのまま立体地形に変えて,パースの中を歩いていけるソフトです。NASAのホームページからもリンクを貼られています。ほかにも,国土地理院から出てる地図センターの地図データと衛星写真を合わせて,鳥瞰図のように見渡せる地図もありました。それは実際にソルトレイクシティオリンピックの会場案内に使われていたそうです。
ほかにも,イギリスの会社と協力して,街中で鳴っている音楽を携帯電話で送ると,曲名をメールで教えてくれるシステムも。
編集部:ああ,やってますね。「グレースノート」とかですね。
古川氏:似たようなソフトなのですが,何がいいかというと,音声のフィルタリングをして,街中のザワザワしている中でも携帯で音を取ることができる点です。きれいにライン入力で直接音楽を取り込めば,それはできるのかもしれませんが,そのソフトは雑音の中での認識率がとてもいい。最初は,音声解析のソフトからで,普通のPCで取った音声の声紋認証で鍵を開くシステムを作っていたそうです。100人の「はい」とか「いいえ」とか言う声で,その1人しか開かないソフトです。確度を高める中で雑音をどういう形で取り除くかをつきつめて,そのノウハウを楽曲認識に応用した。
札幌にいながら,なんかお茶目なその社長は,マンションの1室で仕事していて,車が好きで車を14台持っているとか。(笑)。そういうソフトメーカーは,一時期のバブルがはじけてからいなくなってしまったかと思っていましたが,けっこうすばらしいものを作っている人がいますね。
函館のソフトメーカーで見せてもらったVisioを使ったソフトも,感心しました。Visioが何に使うソフトか,固定観念があるでしょう。でもそのソフトは,まずVisioを使ってWordのテキストファイルを呼び出します。そして漢字を全部ひらがなに戻して,ちゃんとスペースを入れて分かち書きにして,そうするとVisioが点字を打つんですよ。Visioはもともと組織図や平面図を作るソフトでしょう。そのVisioのコンポーネントで点字印字ソフトを作った。これがまたよく動くんですよ。
そういう,既存のものをうまく組み合わせて,かつ自分の想像力を活かしているソフトメーカーがありながら,欠けてるものは,マーケティングの上で協力させていただくこと,実際にデビューを飾るための舞台を用意させていただくことです。LinuxやUNIXも素晴らしいところがたくさんあるけれど,マイクロソフトのプラットフォームの違うところは,そのプラットフォームを信じて付き合ってくれた方が,最終的には市場の中での優位性,会社としてのブランドや売上げという優位性を保証されるようなプラットフォームにしていきたいと思っている点です。
編集部:プラットフォームの維持と発展のために,または将来への対応や準備として,どのような基礎研究を行なっているのですか?
古川氏:アドレスがポピュラーではありませんが,www.research.microsoft.comを見ると,そこには何百の研究者と実際にオンゴーイングで走っているプロジェクトが載っています。たとえばコーネル大学と一緒に何をやっているのか。research.microsoft.comにたとえば「HPC」と入れるだけでHPC関連で200個も300個も出てきます。音声認識,音声発生,コンピュータグラフィックスなどです。コンピュータグラフィックスの分野で世界に5人CGの神様がいるとすると,そのうちの3人はマイクロソフトの社員ではないか,と思いますよ。
それからゴードン・ベル,彼はデーブ・カトラーよりも前にいた歴史の中の神様みたいな人で,マイクロソフトに来て「MyLifeBits(マイライフピッツ)」というプロジェクトを進めています。人間が一生の間に目にするすべてのビットを,すべて記録したらどうなるか,という実験をしています。
変わったところでは…。デジカメに詳しい人なら知っていると思いますが,シグマが最近,12Mピクセルのセンサーを持ったカメラを出しました。それは,CCGでもCMOSでもなくてFoveonのセンサーという…。
編集部:RGBで1ピクセルで読み取ることができるセンサーですね。
古川氏:実はあれにもマイクロソフトが関わっています。
そのほか,次世代のデータベースのあり方から,コンピュータグラフィックス周りの動き,音声認識,音声発生など,あらゆる領域で新しいテクノロジーに,まだたくさん取りかかっています。
編集部:それでは,マイクロソフトが描くデジタル製品の未来,PC(Windows)の未来をどう予測しますか。
古川氏:デバイスとか,ネットワークのトポロジーを越えた状態で,自由に仕事ができるようになると考えています。それから研究というよりもう少し手短にあって非常に重要な要素として取り組んでるものは,UPnP(ユニバーサルプラグアンドプレイ)です。
デバイスを認識して,電灯線の管理からクーラーから,家電製品の制御まで含めて,SCP(Simple Control Protocol)で回していくことができます。家庭の中はUPnPとSCPで回していけば,まったく問題ないということです。
これからは,最初から家庭の中に,メディアサーバが存在するようになるでしょう。その中で,UPnPは面白いアプローチになると思います。
マイクロソフトの提案するテクノロジーなり考え方を適用していただくことは,実は最終的に放送と通信とコンピュータの間のシームレスな環境を作り,お客様の利便性や,市場がさらに大きいものに発展していくためのきっかけになる,ということです。
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IT産業なり,マイクロソフトに関わりを持ってくれるエンジニアに, 光輝く場を積極的に用意してあげたい。 |
編集部:本日はほんとうにありがとうございました。最後に,日本の開発者に対して一言お願いします。
松本氏:プラットフォームの進化に伴って,意識をしなければいけないポイントが大きく変わってくるだろうと思っています。開発の方にはそういう部分を意識してほしい,と一番強く思っています。過去も,技術的な進化に伴って,コンピュータ環境,アプリケーションやソフトウェアの使われ方,使っているユーザー自身が,どんどん変わってきました。同様に,今後どう変わっていくのかというところを意識をして,テクノロジーを見てほしいし,マイクロソフトのことを見てほしいと思っています。
鈴木氏:コンピューティングな世界はこれからの10年もどんどんパワーを増していくので,ぜひITを舞台にした自己表現をしてほしいと思います。生産性アップや,コスト削減という意味だけではなく,新しいバリューを作り出し,新しい世界を作っていく,というフィールドがITの世界にはいくらでも出てきます。そういう部分でぜひ若いデベロッパーの方に,活躍の場として考えてほしいと思います。マイクロソフトもそれに対して,コミュニティの支援など,場を提供するという形で,精一杯バックアップをしていきます。ぜひ世界の中で大きく活躍してください。
古川氏:それと,エンジニアがかっこいい存在であってほしい,と思います。確かに音楽で有名になるとか,F1のドライバーで優勝するのもかっこいい。エンジニアにも光り輝いて,若い子たちに,「将来なりたいのは何?」と聞いたら,電車の運転手かパイロットかエンジニアと言ってほしい,そういう要素をいつも持っていてほしい,と思います。
最近一番ショックだったのは,『13歳のハローワーク』の中で,IT産業のことをネガティブに書かれたことです。それに反論するのではなく,マイクロソフトのプラットフォームは肥沃な土壌であり,活躍するならこちらの舞台で活躍してほしい,ということをお伝えしたい。IT産業なり,マイクロソフトに関わりを持ってくれるエンジニアに,光輝く場を積極的に用意したい。社会的に成功するだけでなく,自分の成果が社会に影響を及ぼすことのできる場を提供したい,そう考えています。
Interview:MSDN Magazine編集部



